2016.01.08 Fri – 01.24 Sun 2016

Hitomi Watanabe Photo Exhibition

2016.01.08 Fri – 01.24 Sun
Wed – Sat 14:00 – 21:00
Sun & Mon 11:00 – 18:00
closed on Tue

¥500 (includes a drink)

渡辺眸は60年代後半、アングラ文化が満開だった新宿を撮り、その後、テキ屋を撮った。学生運動に参加しながら、安田講堂の内側より学生達を撮り、1972年に当時の意識を高く持った若者たちがしたようにインドへと渡った。
それまでは、貪欲に被写体を追っていたが、インド、ネパールの滞在では、ただゆったりと暮らすだけの日々を過ごしながら写真を撮っていた。
旅をしながら根源的な問いを繰り返すプロセスと、写真を撮る行動が、同時進行していくスタイルをその日々で確立したのではないか。

今回は、70年代から90年代にかけて、インドとネパール行きを繰り返していた頃の「天竺」シリーズ、そして、ネパールのモンキーテンプルでの猿との出会いをきっかけに日本各地でも撮影をするようになった「猿」シリーズを展示する。

「インド帰り」と言うと何か刻印を押されたような、「ヒッピー?」「ああ、ニューエージね。」と片付けられてしまう怖さがある。しかし、写真業界の知識もない私の目に映ったのは、まさに「旅の扉」、未知の世界への窓だった。そこからまた自分に戻っていくような、意識の往来を促すだけでなく、親密であり普遍的なアート体験をさせてくれる大変優れた作品群である。

渡辺眸をギャラリーに引っ張って来てくれた折原恵と推薦してくれた大竹昭子に感謝。

2015年 冬 アツコ•バルー

レンズをとおした命のやりとり       大竹昭子

渡辺眸が写真をはじめたのは、写真を撮る女性がいまほど多くなかった1960年代である。カメラは重く、操作も複雑で、男子がするものという印象が強く、加えて、女子がなにがしようとすると、「オンナのくせに」「オンナだから」というセリフがついてまわることも多かった。

そんな頃に若き日を送っていた彼女は、なにを思ってカメラを手にしたのだろう。

自分がいて、その外に「世界」がある。とはいえそれは抽象的な「世界」ではない。自分がそのただ中にあって、さまざまな疑問を生じさせる生の現場のことだ。それに何か問いかけずにいられなくなったとき、写真という方法が有効だったのではないだろうか。

思えば、短歌や俳句や詩にも似たところがある。日々の営みのなかで、ふっと心にひっかかったものを言葉に置き換え、問おうとする。写真がそれとちがうのは、心のなかではなく、目の前の具体物を通してそれを探ろうとすることだ。現実に触れずして写真は生じないから、行動すること、移動することが求められる。

初期の作品に、縁日で露天を出しているテキヤの男たちを撮ったシリーズがある。これは近所の神社で縁日の場所割りをしている香具師の勢いに圧倒されたことからはじまった。

男たちの何に惹かれているのか自分ではわからない。わからないから撮ろうとする。作品を作るという意識ではなく、未知の人間とカメラを介して交感して何かをわかりたいという切実な思いに突き動かされている。写真にはそういう情動をすっぽりと受け止めてくれる寛大さがあるのだ。

70年代に入ると、問いかけの場所は日本の外に広がり、インドとネパールを繰り返し訪れるようになる。その旅と、日本にもどってから撮った猿の写真で今回の展示は構成されている。

インドと猿。

言葉にするとちょっと突飛な組合わせではある。けれども、一点一点の写真にじっくり目を合わせていくと、ふたつを結びつける道筋が浮かび上がってくるはずである。

男が路上に日よけの傘を開いてしゃがみ込んでいる。足の裏をぺったり地面につけ、これ以上無理と思えるほど小さくたたんだ体に布を被り、香箱を作っている。もじゃもじゃ頭で、黒光りした顔の真ん中には大きな鼻がでんとあり、唇からは白い歯がこぼれている。

この写真から私が思うのはたったひとつのことだ。

この男は生きている。生きて、そこにいて、写真に写っているということを受け取る。当たり前と言えばそうだ。けれども、そんなシンプルな事実を、これほどまっすぐに差し出す写真にはめったに出会わないものだ。

猿の写真にしても同じことを思う。

たしかに人と猿の仕種には似たところがあるが、写真が伝えてくれるのはそれだけではない。生命を授かってこの世に誕生し、同じ空気を呼吸し、いまを生きている同志がそこにいるのを感じる。人と猿がそのような意味で並び合っているのだ。

生きとし生けるものが放つ生のエネルギーに等しく感応する術《すべ》を渡辺眸は備えている。生来のものもあるけれど、旅でそれにより磨きをかけたのだろう。彼女にとって外界とは生命の営み場にほかならない。そう言い切っていい。

Event

◉1月8日(金) 19:00~21:00 オープニングパーティー 入場無料

◉1月16日(土) 19:00〜21:00
渡辺眸×飯沢耕太郎 トークショー ¥1,000 (1drink付)

◉1月21日(木) 19:00〜21:00 ¥1,000(1drink付)
ネパール大震災復興支援・ダレデモドーム 報告会
『僕らが楽しむことが、誰かの助けになる。』
極地建築家の村上祐資さんが設計した”ダレデモドーム”を、日本各地で小学生から大人まで楽しみながら作り、ネパールの村へ送り届ける活動報告会です。
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